“売る技術”ではなく“選ばれる構造”をつくることが、マーケターの本分だ

最近、「マーケター」という肩書をよく目にするようになりました。SNS運用、営業支援、広告運用、キャンペーン立案…どれもマーケティングっぽい。

ですが、正直に言えば、多くの場合「営業代行の言い換え」に過ぎないようにも見えます。

マーケティングとは本来、人の行動をどう設計し、何に影響を受けて意思決定するかを読み解き、そこに戦略を組むことです。

その本質は、単なる広報でもなく、イベント企画でもなく、まして広告出稿代行ではありません。むしろ、数字を見て仮説を立て、検証しながら構造を組み上げる知的な仕事です。

【データ分析の本質は「仮説を検証する構造」をつくること】

マーケティングの本質にあるのは、購買行動の“決定要因”を見抜く力です。

そしてその力は、仮説 → 検証 → 修正 → 実行（再検証） という地味で地道なサイクルのなかでしか、鍛えられません。

データ分析の出発点は、数字ではなく問いです。

「なぜこのページは直帰率が高いのか？」「このタイミングで離脱が起きるのは何かの障壁か？」

このような“仮説”があるからこそ、データに方向性が生まれ、分析が戦略のための道具になります。

仮説を検証するためには、必ず比較が必要です。

数字は、単独では意味を持ちません。相対で見ることで、行動の“なぜ”が浮かび上がります。

検証の結果から仮説を修正し、もう一度試す。この繰り返しの中で、徐々に“選ばれる理由”が明確になっていきます。

この時、重要なのは偏りや洩れに自覚的であること。見ようとしているものだけを見て、肝心な要素を取りこぼしてしまえば、戦略は机上の空論になります。

最終的に私たちが追い求めるのは、「人がどうしてその行動を選んだのか？」という“決定要因”の設計です。

見せ方を変えたのか、順番か、タイミングか。どこに心理的なトリガーがあり、どこで背中を押されたのか――

これらを数字から逆算し、戦略・戦術に組み上げていく。それこそがマーケティングの本来の仕事です。

マーケターとは、「広告屋」ではありません。人間の判断に対して仮説を立て、検証し、価値と選択肢の“構造”をつくる者です。

数字を動かすのではなく、人の決定要因に影響を与えるこそが、本物のマーケティングです。

私たちはデータの些細な動きを捉え、次の行動へ移るナッジを作り出しているのです。