なぜ美容業界は人が定着しないのか?──“辞めたくなる構造”と“続けたくなる設計”の違い
- michio kobayashi
- 9月23日
- 読了時間: 3分

「美容師って、どうしてすぐ辞めるの?」業界にいる人なら、耳にタコができるほど聞いてきた問いかもしれません。でも、その裏側には「辞めたくなる構造」そのものが放置されてきた現実があります。
■ 離職の原因は「関係性が築けない」ことにある
美容業界では、スタッフ同士の物理的距離が非常に近いという特性があります。だからこそ、「人として合う・合わない」がダイレクトに影響しやすく、小さな違和感がストレスとなり、やがて辞意に繋がります。
加えて、まだまだ残るハラスメント気質や、「気持ちを語ってわかってもらおうとする」感情の同調圧力的なマネジメント。
これでは、長く続けられるはずもありません。そもそも関係性を高めることが“本人のメリット”として設計されていないのです。
■ 本当の問題は“エンゲージメント”の欠如
最近では、「人が辞めない会社」をつくるために「エンゲージメント(愛着と貢献意識)」という言葉が使われるようになりました。
でも、美容業界ではこの考えが承認欲求の満足だけに偏っているケースが多く見受けられます。
「褒めて伸ばす」「仲良く働く」——もちろん、それも必要ですが、それだけでは足りません。
■ 長く働きたいと思える「4つのエンゲージメント設計」
美容室における“定着する仕組み”は、以下の4つの設計でできています。
要素 | 内容 | 期待できる効果 |
① 承認 | 「見てくれている」「褒めてもらえる」 | 安心感・心理的安全性 |
② キャリアパス | 昇格・技術の習得段階・未来像が明確 | 成長実感・継続意欲 |
③ 自己決定感 | シフト・施術・学びの方向などに裁量がある | 主体性・責任感 |
④ 貢献実感 | お客様や仲間の役に立っている実感 | 誇り・帰属意識 |
たとえば、「スタイリストデビューまでの道のり」や「自分が接客したお客様の再来率」など、成長や貢献が“見える化”される環境こそが、定着を促します。
■ 給与や労働時間だけが答えではない
離職の話になると、どうしても「給料を上げればいい」「労働時間を短くしよう」といった表面的な対策に終始してしまいます。
でも本質は、「働くことが“自己実現”につながっているか?」という点です。
「ここで働いていて誇らしい」
「自分が成長していると感じる」
「将来が見える」
そんな状態こそが、長く働きたいと思える環境です。
■ まとめ:人が定着するサロンは「人を育てる設計」がある
結局のところ、“好きか嫌いか”で辞めるのではなく、“意味があるかどうか”で残る時代になっています。
「ただ気持ちを語り合う」だけでは限界があります。構造としてエンゲージメントをデザインすることが求められています。
そのうえで、ハラスメントや圧のある言動は論外です。どれだけ想いがあっても、伝え方や関わり方を間違えば逆効果。そして、経営者や指導的な立場にある人ほど、“自分をアップデートし続ける”姿勢が不可欠です。時代の価値観、人の育て方、働く動機は変化しています。
「昔はこうだった」は通用しません。変わるのではなく、進化する意識こそが、定着する組織の根本になるのです。



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