値上げだけでは生き残れない時代へ──美容業界の現実
- michio kobayashi
- 10月30日
- 読了時間: 3分

変化の読み取りで明暗が決まる
美容室を取り巻く環境は、いま急速に厳しさを増しています。何度か取り上げてきたように、業界全体で「苦境」がより鮮明になってきました。
コロナ以降、多くのサロンがコスト上昇に対応するために値上げを進めてきましたが、すべてのお客様がその価格に追従できたわけではありません。
結果として、単価は上がったが来店頻度が落ちるという、いわば“見かけ上の売上維持”が起きています。これが、足元の厳しさを生む最大の要因です。
苦境の背景にある3つの要素
現状の要因を整理すると、大きく3つの柱が見えてきます。
競合の激化
出店数が増え続ける中で、商圏の重なりが顕著になり、同エリア内での価格・メニュー競争が激化しています。特に小規模サロンほど、集客面での打撃を受けやすい構造です。
価格の問題
値上げによる離脱は、想定以上に大きい印象です。価格に対するお客様の許容度が限界に達しつつあり、単純な値上げでは支持を維持できない状況です。
人材不足の長期化
スタイリストの確保が依然として難しく、教育リソースや採用コストが経営を圧迫しています。新規出店が続く一方で、地方では閉店も増え、「出店と撤退のバランス」がようやく見え始めた段階です。
明暗を分けるのは「発信力」
現状では、メニューや技術で大きな差別化ができているサロンはごく一部です。その一方で、SNSや口コミなどで“発信力のあるサロン”が強さを見せています。
同じ技術、同じ価格帯でも、「誰にどう伝えるか」で結果が変わる時代。情報発信を積極的に行い、サロンの価値を明確に言語化できる美容師・経営者ほど、固定ファンを増やしやすい傾向があります。発信とは広告ではなく、「選ばれる理由を自ら提示できる力」と言えるでしょう。
今後の展望とリスク
今後、都心部では出店が続く一方で、人材不足は徐々に落ち着くとみられます。しかしその過程で、顧客支持の弱いベテラン美容師の離職や転職が進む可能性が高く、地域によっては雇用・店舗バランスの再編が加速するでしょう。
また、値上げにはもはや限界があり、「価格を上げるほど利益が減る」という逆転現象すら起きかねません。これからは、値上げではなく価値づくりで差をつけるフェーズに入っています。
まとめ
美容室の経営環境は、これまで以上に複雑化しています。競合、価格、人材──どれも外部要因に左右されやすい課題です。しかし、発信力だけは“内側から磨ける力”です。
そしてもう一つ、正確な分析力も求められています。現状を数値で捉えられなければ、正しい戦略を立てることはできません。分析ができないと、判断は感覚に流れ、結果としてその場しのぎの経営になります。その先に待つのは、変化の波に翻弄される未来です。
とはいえ、まだ遅すぎるわけではありません。今なら、ギリギリ間に合うかもしれません。データをもとに現状を把握し、発信と戦略をつなげることで、サロンは再び成長軌道に戻ることができるのです。
では、皆さまのご相談をお待ちしております。



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